スラムダンキング ウォルマート

      『スラムダンキング ウォルマート』
              -まちを守る戦略・アメリカの郊外開発実例に学ぶ

著者: アル・ノーマン

訳者南部繁樹

発行: 叶蜻芟o済界


原書の題名を直訳すると「ウォルマートをたたきぶつせ」という刺激的なものであるが、副題は「あなたのまちの大規模店舗によるスプロールを阻止する方法」である。世界最大の小売企業、全米一の巨大企業に成長したウォルマートの出店と戦い続ける地元市民グループの支援活動家アル・ノーマンがこれまでの6年間(1993年-99年)にわたる戦いを通した体験から、大型店によるスプロール(まちの中心から無秩序に拡大する低密度で場当り的開発)阻止の方法をまとめたものが本書である。

著者は、ウォルマートが自ら生活するマサチューセッツ州グリーンフィールドに出店申請を提出し、町議会でゾーニング(地区ごとの土地・建物等規制)修正が決定された後、地元の反対運動グループの専門的プロデューサーとして雇われ、ウォルマートとの戦いを初めて経験する。そして運命の1993年10月19日。最終決定は住民投票により、9票差で勝利を勝ち取ることとなる。彼から届いたコメントによると、その後、今日までの9年間で全米42州、カナダ、プエルトリコ、バルバドス、バージン諸島において反スプロール活動を行っているという。

各地での体験を通して彼が一貫して述べていることは、「地域住民が地域の個性を守り、自らの意志で生活していくことの重要性」である。本書は活動を通してまとめられた住民の立場による「まちを守るまちづくり運動の史実書」としての価値を見出したい。

南部 繁樹